2013年11月10日日曜日

横山大観展 良き師、良き友(横浜美術館)

横浜美術館で開催された、横山大観の展覧会。主要な作品を、前期と後期で展示替えしながら紹介する大規模な展覧会。

その一方で、大観だけでなく、その友人や、弟子たちの作も合わせて展示するという、贅沢な内容の展覧会だった。

大観というと、生々流転や瀟湘八景図に見られるような、ぼかしを活かした、いわゆる朦朧体、という表現方法が必ず思い浮かぶ。

確かに、墨という一色の色だけを使って、その微妙な濃淡で、多彩な世界を生み出す技術には、ただただ舌を巻くしかない。

しかし、大観の作品を、年代順に見て行くと、そうした絵は多いが、決してそれだけではないことが、よくわかる。

大観の作品には、意外に、色鮮やかなものが多い。

秋色、という作品では、緑色の葉の色が、秋になり、周囲から徐々に紅色に染まってい様子が描かれている。実際に、このように見えるかどうかはわからないが、野心的な、大胆な描き方だ。

野の花、という作品では、文字通り、野に咲く日本の花々が描かれている。葉の緑色がベースになっており、その中に、花々が、いろいろな色で描かれている。決して、真っ赤とか真っ黄色の花はない、いわゆる、日本の地味な花の色が、この絵に、不思議な華やかさを生み出している。

大観の人物像を見ると、同じ人物が描いたのか、と思われるほど、多彩な描き方をしている。生涯にわたり、いろいろな表現方法を模索していたという大観の姿が、そうした人物像の中に垣間見える。

横山大観と同じ年で、大観が日本美術院の同人に推薦したという、小川芋銭。芋銭は、茨城県の牛久沼の生まれで、その地にある河童伝説などを中心に、何とも不思議なユーモラスな絵を描いた。

その一方で、漢籍に造詣が深く、大観は、芋銭のそうした展を深く尊敬し、生涯にわたって、”芋銭先生”と敬意を込めて呼び続けていたという。

おそらくこの展覧会は、大観の多彩な世界は、周りの人々との、様々な交流を通して、生み出されて行った、ということをいいたかったのだろう。

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