2013年11月23日土曜日

カイユボット展ー都市の印象派(ブリヂストン美術館)

カイユボットというと、印象派展などで、モネやルノワールといった巨匠を横目で見ながら、その片隅に1点か2点が紹介される、という印象の画家でしかなかった。

東京のブリジストン美術館で開催されたこの展覧会では、はじめて、まとまってカイユボットの作品を見る機会を得た。日本で初めてとなる回顧展ということだ。

その感想を一言でいえば、カイユボットという画家は、何とも捉えどころがない画家だなあ、ということになるだろうか。

会場の入り口に、3枚の自画像があった。

彼を写した写真と比べて見ると、そっくりで、対象をそのまま捉えようした、この画家の特徴が見て取れる。

人物を描いた肖像画は、いずれも、友人や親戚など、身近な人々を描いた作品が多い。やや粗いタッチながら、対象人物を決して美化せずに、ありのままの姿を表現しているようだ。一言でいえば、上手い。

都市の画家、というこの展覧会のサブタイトルが表すように、パリを描いた作品のコーナーでは、大作が並べられ、展覧会のハイライトとなっていた。

”ヨーロッパ橋”と”建物のペンキ塗り”という2つの大作は、パリという大都会における、様々な階層の人々の人間模様を、一つの場面に集約している。

”イエール川のペリソワール”という作品は、川で独り乗りのボートを漕いでいる人々を描いている。漕ぎ手の麦わら帽子と、オールの先の丸くなった部分が、形が似ていて、同じ黄色っぽい色で描かれ、その不思議な対比が面白い。

カイユボットは、若くして親の財産を引き継ぎ、絵に没頭できる環境を得た。同時に、知り合いでもあったモネやルノワールらの作品を購入し、他の印象派の画家たちの生活を支えていた、という一面も持っていた。

カイユボットの作品に、どこかのんびりとした、他の印象派に感じる緊張感や緊迫感が感じられないのは、そうした状況があったからなのかもしれない。

自身も、印象派展に何度も出展しており、会場には、その印象派展のカタログも合わせて展示されていた。

画家としての力量は、この展覧会を見た人々であれば、誰も納得するに違いない。

受け継いだ財産で購入したパリ郊外の別荘の周辺を描いた風景画では、モネやルノワールの、点描画のような独特の風景画の手法を使い、のどかな郊外の農村風景を多数描いている。

会場には、弟で写真家でもあったマルシャルの写した、カイユボットは勿論、その家族や、当時のフランスの風景を写した、多くの写真も飾られていた。

中でも興味深かったのは、モネやルノワールの若き日に描いた場所として有名な、アルジャントゥイユの写真が何枚かあったこと。写真からの印象は、モネやルノワールの絵画とは、少し違っていた。

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