上野の東京都国立博物館で開催された、江戸時代の風景画を中心にした、小規模な展覧会。
同時に開催されていた、上海博物館の中国絵画の特別展と、セットのような形で開催された。
会場は、本館の2階にある、小さな特別室2つだけを利用したものだったが、展示された作品は、あまり普段は目にする機会がない、珍しいものばかりだった。
池大雅が、松島の風景を瀟湘八景図になぞらえて、長い巻物に描いた作品。
瀟湘八景図は、日本の絵師たちにとっては、風景画のひとつのモデルだった。湖の部分は、何も描かずに、余白で残す。そうした描き方も、日本の絵師たちには、受け入れやすかったのだろう。
松平定信のお抱え絵師だった谷文晁が、パトロンの定信に従って訪れた土地の風景を、西洋絵画の技法を一部に取り入れながら描いた、相州名勝図帖。
数多くの絵画技法をマスターしていた谷文晁らしい、写実的な風景画だ。
個性的な絵で知られる長沢蘆雪が、厳島神社とその周辺の風景を描いた、宮島八景図。いわゆる蘆雪らしさを抑えて、依頼者の意図を忠実に描いた、といわれている。
普段、あまり目にする機会がない、朝鮮王朝時代のいくつかの風景絵画。
江戸時代の日本では、朝鮮の絵画も、中国の絵画として見ていたという。一見しただけでは、これらが朝鮮で描かれたものとは、確かにわからない。当時の、東アジアの文化的な関係が、よく伺える。
小規模ながら、見所の多い展覧会だった。
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