2013年11月9日土曜日

描かれた都ー開封・杭州・京都・江戸(大倉集古館)

東京、虎ノ門にある、大倉集古館で行われた展覧会。中国と日本を代表する、4つの都市を描いた絵画を一同に展示する特別展。

入り口を入ったすぐの所に展示された、清明上河図。ただし、これは、明の時代に仇英によって描かれていると言われているコピーだ。

オリジナルは、北京の故宮博物院にあり、昨年、上野で行われた展覧会で展示され、私もそこで見る機会を得た。

オリジナルは、すでに色はかなり落ちてしまい、色も黒ずんでしまっていた。こちらのコピーはさすがに色鮮やかで、オリジナルの当時の雰囲気をよく伝えているように思える。

解説によれば、仇英は、基本的にはオリジナルを忠実に描いているが、一部は、自分が暮らしていた蘇州の様子を取り入れたという。

会場には、2点の仇英の款の入った作品が展示されていたが、ひとつは後の清の時代のもので、もうひとつも明の時代に描かれたものだが、仇英のものではないようだ。

つまり、これらの絵は、コピーのコピーということになり、この清明上河図という作品の持っている、尋常ではない背景が感じられる。

杭州の代表的な名勝地といえば、西湖。清の時代に描かれた西湖図は、上空から西湖全体を俯瞰している。清の時代の、合理的な精神が伺える。

日本の狩野山楽が描いた西湖図は、それとは全く違っている。山楽独特の表現で、湖の浮き島と、その左側の対岸の風景に焦点を当てて、大きな余白を作りながら描いている。中国と日本の絵画への意識の違いが表れていて、面白い。

曾我蕭白の描いた西湖図は、湖の畔に建つ住居を中心に描いている。蕭白の晩年の作品というが、そこには、例のエキセントリックさはなく、美しい風景を、緻密な線で、伸びやかに描いている。

この展覧会で一番印象に深く残ったのは、長谷川巴龍という人物が江戸時代に描いた、洛中洛外図。いわゆる素人の素朴画に近い。

ある程度の絵の修行は行ったように見えるが、建物が水平に描かれていたなかったり、人の目鼻が、子供が描くように、横棒を引いただけだったりする。

しかし、そうした稚拙さが、かえってこの絵にダイナミックさを与えており、これまで見てきた、幾多の洛中洛外図の中でも、とりわけ強烈な印象を残す。

江戸時代の日本橋を描いた、東都繁盛図。かつて、日本橋のたもとにあった魚市場が描かれている。そこに描かれている魚の種類の豊富さに驚かされる。クジラかサメのような、大きな魚まで描かれている。

そのあたりは、現在は、オフィス街となってしまい、まったくその面影はない。

4つの都の時間旅行をしたような、実に贅沢な内容の展覧会だった。

0 件のコメント:

コメントを投稿