2013年11月10日日曜日

ターナー展(東京都美術館)

東京、上野の東京都美術館で開催された、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの展覧会。

この展覧会のことは、昨年の暮れに知った。それ以来、ずっと楽しみにしていた。2013年に開催される展覧会の中でも、最も期待していた展覧会のひとつだった。

ターナーのコレクションで知られる、ロンドンのテートミュージアムから、生涯のほとんどの期間をカバーする、およそ100点の油彩、水彩、スケッチなどの作品が、一同に展示される。

出展作の中には、ターナーを紹介する本の中で、必ずといっていいほど紹介されるような、ターナーの代表作といっていい作品も、何点か含まれている。

日本で、これほど多くのターナーの作品を鑑賞する日が来るとは、少し前までは、全く想像できなかった。

リッチモンド・ヒルを描いた、横3メートルの大作。フランスのヴァトーの絵にヒントを得て、広大な平原の中に、沢山の人物が描かれている。

近づいて見ると、遠くの人間の姿が、白い絵の具で、小さくしかし克明に描かれている。この頃のターナーは、一枚の絵の中で、大雑把に描く技法と、詳細に描く技法を、対象に応じて描き分けていた。

この絵だけを見ると、ターナーは、ダ・ヴィンチ、ティツアーノ、クロード・ロラン、オランダ風景画などの伝統的なヨーロッパ絵画の手法を駆使した画家、ということになる。

ターナーは、若くしてアカデミーの会員になるなど、早くから成功し、生活はゆとりのあるものだった。その後、いわゆる”ターナー的”な、大胆な画法の試みを行えたのも、そうした状況があったからに違いない。

日の出、湖に沈む夕陽、などの後期の作品を見ると、水の上に映る光や空の光の微妙な色合いを、何とか捉えようとするターナーの格闘の様子が伺える。刻一刻と変化するあの微妙な色合いを、ターナーは、キャンバスの中に閉じ込めようとしたのだろうか。

彼のそうした試みは、後の絵画史に大きな影響を与えた。

ターナーの活躍した時期は、ちょうどパリの印象派が登場する少し前だった。モネは、明らかにターナーから影響を受けていたが、決してそのことを認めなかったという。

日本の竹内栖鳳、横山大観などの画家たちも、もしかしたら、ターナーを参考にしたのかもしれない。

夏目漱石はターナーの絵を愛したが、漱石は、ターナーの作品の中に、中国の山水画に通ずるものを感じ取ったのかもしれない。確かに、ターナーの作品の中には、いわゆる”気”のような、自然の神秘のようなものを感じることがある。

それにしても、夢の時間は、あっというまに過ぎてしまう。もう出口にたどり着いてしまった。

果たして、私は、この後、何回、入口から出口を行ったり来たりするのだろう。

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