紅葉が美しい、府中の森公園。その公園の奥の方に、ひっそりと佇む、府中市立美術館。私の好きな美術館の一つ。そこで、ウィリアム・モリスの展覧会が開催された。
最初のコーナーは、セント・マーティン教会などイギリス各地の、モリスらデザインが関係したステンドクラスの美しい写真が展示されていた。
モリスの他、ロセッティ、バーン=ジョーンズなど、ラファエロ前派の面々がデザインしたステンドクラスは、小さな写真だけだが、実に美しい。
モリスが理想とした中世の世界が、会場に再現したかのようだった。
柳、ひなぎく、るりはこべなどの植物や、小鳥などの動物をあしらった、モリスがデザインした、美しい壁紙の数々。
中でも、展覧会の目玉と言える、いちご泥棒、という不思議な名前の布生地へのプリントは、難しいと言われるインディゴの青の色の染色など、全部で24色の版木で染められている高価なもの。
モリスは、産業革命の、機械的な工業品を嫌い、それ以前にあった、手作りの暖かい工芸品の復活を夢見たが、皮肉にも、そうした工芸品は、一般の民衆が手にするには、あまりに高価な物になってしまった。
美しいデザインがテーマの展覧会とあって、殺風景な、いつもの絵画などの展覧会とは違い、展示場の装飾も、モリスの世界を再現すべく、凝ったものだった。
モリスのその美しい空間を抜け、現実の世界に舞い戻る。紅葉の森を、モリスの美しい世界の余韻を感じながら、会場を後にした。
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