2013年4月27日土曜日

フランシス・アリス展 第1部(東京都現代美術館)

フランシス・アリスは、ベルギーに生まれたが、建築家を目指し、メキシコを訪れ、メキシコという国の矛盾を抱えた社会構造に触発され、映像作家に身を転じた。

第1期に当たるこの展覧会では、そのメキシコで作成した作品を中心にした内容。

ほとんどが映像作品だったが、中でも印象的だったのは、トルネード。

アリスが、メキシコの広大な大地で発生したトルネードに、カメラをもって飛び込んで行く。

アリスがトルネードに入った瞬間に、画面いっぱいに広がる、茶色の砂の嵐と、けたたましい風の音。

何の説明もいらない。この作品は、フランシス・アリスというアーティストが、どんな人物なのかを、明確に表している。とにかく、クレイジーな人物だ。

虚偽の物語。真っ直ぐに続く道の彼方に、蜃気楼が映っている。カメラはずっと進んでいくが、蜃気楼には、決して追いつくことはできない。何とも皮肉な作品。

アリスが、大きな氷を、街の中でひきづっている。やがて、その氷は、当然のことながら、すべて溶けてしまう。メキシコシティーで、およそ9時間もかけて、延々と撮影したという。人間の営みに対する、シニカルな視点が光る。

愛国者たちの物語。メキシコシティの広場にある、柱の周りを、アリスと羊の群れがグルグル回り、やがて去っていく。

1968年に同じ場所で起こった反政府運動を題材にした作品。当時の人々は、政府への抗議のため、羊の鳴き声を真似てデモンストレーションしたという。国民を家畜のように扱った、という抗議だろう。

ルピタに捧げる歌、という作品では、アニメーションで、一人の女性が、片方のコップから別のコップに水をいれ、次に逆のコップに水をいれ・・・という作業を延々と繰り返している。BGMで、明日に先送りしよう、というスペイン語の歌が流れている。

いずれの作品も、フランシス・アリスという人物と、複雑な歴史や文化をもっているメキシコという風土が、不思議な化学反応を経て生まれた作品のように思われた。

6月末から行われる第2期の展覧会では、ジブラルタル海峡でのパフォーマンスに関わる展示内容だという。

これは、見逃すわけにはいかなくなった。

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