2013年4月14日日曜日

かわいい江戸絵画(府中市美術館)

円山応挙の狗児図。日本のみならず、世界中のどんな絵画を探しても、これほど愛らしい子犬の絵は、そうは簡単には見つからないだろう。

弟子の長沢蘆雪も、その描き方を引き継ぎ、師匠に勝るとも劣らない子犬の絵を残している。ただし、こちらは会場には展示されていないが。

森狙仙の猿の絵。こちらは、本物の猿を良く観察し、写実に描かれている。親子が毛繕いをしている場面などは、情感に溢れている。

仙厓の文殊師利菩薩図。文殊菩薩が乗っている動物の顔はまさに漫画。自由この上ない。

伊東若冲の河豚とカエルの相撲図。水墨画で、文字通り、河豚とカエルが相撲を取っている様子をユーモラスに描いている。

与謝蕪村の蛙絵扇面。一筆書きで後ろ姿の蛙が描かれる。蛙のシンプルなシルエットのみが描かれている。余分な部分をすべて削ぎ落として描かれている。

蕪村を始めとした、こうした絵画を描いた絵師たちは、人間は、対象の全てを見てそれを判別しているのではなく、その対象を区別できる最小限の要素だけを見ている、ということを、はっきりと知っていたのだ。

円山応挙にしても、伊東若冲にしても、ふだんはもっと細かい筆使いで、見事な作品を描く一方で、この展覧会にあるような、ユーモア溢れる愛らしい絵画を描いた。

そこには、この国の人々が持っている、ある種の性質を表しているように思えた。

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