東京、新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で開催された展覧会。
展示されたのは、イタリア、フィレンツェにある、ピッティ宮殿近代美術館が所蔵する、トスカーナを中心にした、イタリアの19世紀、20世紀の近代絵画の作品。
トスカーナの絵画といえば、ルネサンス、マニエリズム以降は、これといった名前が思い浮かばない。この展覧会は、そうした隙間を埋める、貴重な内容だった。
アントニオ・フォンタネージのサンタ・トリニタ橋付近のアルノ川。フォンタネージは、明治の日本が招聘したお雇い外国人の一人だった。夕焼け色に染まったアルノ川があ、哀愁の気持ちを呼び起こす。
アンドレア・ピエリーニの煉獄におけるダンテとベアトリーチェの出会い。ダンテの神曲の中の有名な場面を、幻想的な雰囲気で描いている。
19世紀後半のイタリアには、フィレンツェを中心に、マッキアオーリという芸術家のグループが現れた。フランスのバルビゾン派の影響を受けた彼らは、ルネサンスの伝統も意識しながら、独自の絵画を生み出して行った。
彼らはフィレンツェにあった、カフェ・ミケランジェロに集まり、芸術論を戦わせた。折しも、イタリアはオーストラリアからの独立と、統一の機運が高まっていた。彼らは、そうした政治的な意識も持っていた。
マッキアオーリの一人、ジュゼッペ・デ・ニッティスのオファント川岸で。横長のキャンバスに、川岸を歩く、牛の長い列が描かれている。
20世紀になると、他の国からの影響を受けて、様々な技法の画家たちが登場する。
オスカル・ギーリアの貝殻のある風景。静物画だが、画面全体が青緑とワインレッドの2色で分けられており、その中に、白い貝殻と、水の入ったコップが描かれている。
ジョバンニ・コステッティの物思いに耽る女性。ルネサンスのフラ・アンジェリコのような、透明感を持った、それでいて不思議な雰囲気を持った作品。
近代のトスカーナの画家たちにとって、ルネサンス芸術は、良い意味でも悪い意味でも、圧倒的な存在感で、大きな影響を与えていたことが伺える。
こも展覧会は、ルネサンスではない、トスカーナの近代絵画を味わうことができる、実に貴重な経験だった。
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