2013年10月12日土曜日

明治のこころ(江戸東京博物館)

大森貝塚を発見したことで知られるエドワード・モース。明治維新後間もない、1877年、明治10年に初めて日本を訪れて、その後も2度来日した。

モースは、当時の日本人の暮らしに深い興味を抱き、様々な物を、本国のアメリカに持ち帰った。それらは、現在では、アメリカの二つの美術館、博物館に収められている。

江戸東京博物館で開催されたこの展覧会では、その中から、320点を展示した。

明治時代、そうした品々を実際に使っていた人々は、まさか、およそ100年後に、それらが博物館に展示されるとは、夢にも思わなかったに違いない。

下駄、簪、日常の着物、手ぬぐい、お歯黒道具、しゃもじ、皮むき、まな板、タバコ入れ、トコロテンつき、菓子箱、弁当箱、箒、はたき、燭台、こま、虫かご、双六、店の看板・・・

明治時代の人々の生活が、蘇ったようだ。

モースは、その滞在の様子を、『日本 その日その日』という本に記している。会場には、その本から抜粋された言葉が、パネルで展示されていた。

モースは、当時の日本が、家の扉を開けっ放しにしていても泥棒が入る心配をしなくていいほど平和な町であること、一般の人々が正直で素直であること、日常の生活用品が実に美しく作られていること、などを大きな驚きをもって記している。

展覧会のパンフレットには、”アメリカから里帰り”、と書かれている。そうした品々が帰ってきた国では、誰もが将来に不安を抱え、ストーカーに命を奪われる危険を感じ、家族を装う他人に金を奪われ、他人の苦しみを自分のものと感じられない、という生活を送っている。

モースが、かつて見た国は、残念ながら、もはやどこにも存在しないようだ。

そして、これからも、そうした国は、二度と、現れることはないのではないか。

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