2013年10月27日日曜日

柳宗理の見てきたもの(日本民藝館)

東京、駒場にある日本民藝館へ。

この、いわゆる民藝品を数多く所蔵する施設を創設したのは、民藝運動を起こした柳宗悦。その息子で、デザイナーとして世界的に名が知られている柳宗理は、父の後を継いで、その館長を長く務めた。

柳宗理は、おしくも2年前に、96歳で亡くなったが、ゆかりの日本民藝館で、彼が集めたコレクションの数々が、展示された。

父の宗悦が、日本を中心とした民藝品を集めたのに対して、宗理は、インド、アフリカ、ヨーロッパ、南米など、世界中から、素朴な生活用品、仮面などを収集した。その差は、時代の違いがもたらしたものだろう。

そうした展示品の中で、とりわけ深い印象を残したのは、ドゴン族を代表する、アフリカ各地の奇妙な仮面の数々だった。

デフォルメという言葉では、とても収まりそうもない、その不思議な形には、ただただ呆れるばかり。

3メートルほどの細長い仮面。博物館などに展示している分には、別に問題はないが、実際につけるとなると、つけた人間は、そのバランスを保つのに、相当苦労するはずだ。

真っ直ぐな、6本の平木を組み合わせて作られた仮面。最初は、これが仮面?と思ったが、よくよく見ると、下の方には、目を表す穴があり、木を組み合わせたオブジェが、人の顔に見えてきた。

アフリカのある部族の腰布。そこに描かれている文様が、実に不思議。一つ一つの文様は、シンプルだが、その組み合わせ方が、不規則なように見え、しかし、何かの規則がありそうにも見える。その規則を見つけようとして、なかなかその前から離れられない。

朝鮮時代に描かれた3つの地図。一つは、中国を中心とした世界地図。しかし、そこにはヨーロッパやアフリカなどは描かれてはいない。まさに、中華思想そのもの。

2つめの地図は日本国。3つ目の地図は琉球国。この時代、朝鮮では、琉球はひとつの国と考えていた。

現在、東アジアの国境問題が話題になっているが、国境というものは、所詮は時代的なものだということが、そうした地図からよくわかる。

インドやアフリカの絞りの染物が何点か展示されていた。その素朴な味わいは、日本の絞り染めの原点のようなものを感じる。絞りという技術は、世界各地で自然に誕生した技術なのだろう。

宗理が、日常の生活で使っていた、濱田庄司や河井寛次郎らの器や茶碗などが、その生活を再現するように、テーブルの上に並べられていた。それらを見ていると、懐かしいような、何か暖かいものが感じられる。

大量生産された、誰が作ったのか分からない、個性のない食器に囲まれた現代人の暮らしと比べると、柳宗理の日常は、少し違っていたようだ。

宗理のデザインは、世界中の様々な品々からのインスピレーションや、そうした日常を彩る品々の中から生まれたのだ、ということが、この展覧会から伺えた。

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