2013年10月27日日曜日

モローとルオー 聖なるものの継承と変容(パナソニック汐留ミュージアム)

幻想的な絵で知られるギュスターブ・モローは、絵画学校の教師を務めていた。その教え子の一人に、イコンのような独特の絵画で知られるジョルジュ・ルオーがいた。

この二人の関係をテーマにした、パナソニック汐留ミュージアムでの展覧会。

モローは、私がもっとも好きな画家の一人。ルオーも、今はそれほどではないが、かつては入れ込んだことのある画家だった。この二人が師弟関係にあったことは、その後に知った。

モローのピエタ。未完成作品だが、モローがどのように絵画世界を作り上げて行ったかの過程がよくわかる。

画面の右側は森が、左側には遠景が描かれている。中央に、十字架から降りされたキリストがおり、それをマリアが体ごと支えるように抱きかかえている。伝統的な構成のピエタだ。

モローは、部分部分を描いて行くのではなく、全体を描きながら、少しづつ絵の具を重ね、その濃密な世界を徐々に深めて行くように、絵を仕上げて行ったようだ。

後年の同じテーマの作品では、全体の構成がよりシンプルになり、広い平原に、キリストとマリアだけが描かれている。

ルオーは、太い黒い線と、その中に原色の絵の具を落としこむような画風を確立して行くが、初期の頃の作品は、モローの影響を受けてだろうか、神秘的ながら繊細な画風の絵を描いていた。

当時の画家としての登竜門と言えるローマ賞を目指して、大作を準備していた頃のルオーのデッサンなどからは、まだ後のミゼレーレなどの作品の雰囲気は、あまり感じられない。

モローのヘラクレスとレルネのヒュドラ。9つの頭を持つヘビの姿を持つヒュドラを、モローは、いろいろな種類のヘビの頭を組み合わせて描いている。

モローは、現実には存在しない伝説上の人物や風景を描くにあたり、いろいろな図鑑や書物を参考にしていたという。この作品を描くのに、沢山の種類のヘビを試してみたのかもしれない。

モローの教え子の中には、マチスなどもいたが、中でのルオーを最も評価していたという。その二人の作品が、母国を遠く離れた地で、このような形で展示されるようになるとは、本人たちは、おそらく想像もしなかったに違いない。

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