2013年7月28日日曜日

大妖怪展(三井記念美術館)

今年も暑い夏がやってきた。夏になると、妖怪にまつわる展覧会が、よく開催される。

三井記念美術館で開催されたこの大妖怪展は、妖怪学者として著名な、小松和彦の考え方をベースにして、よく企画された内容の展覧会だった。

室町時代に描かれた、北野天神絵巻 弘安本には、天神様の変容としての、赤い鬼の姿が、はっきりと描かれている。

同じく鎌倉時代の大江山絵詞。日本の妖怪の物語の代表的な酒呑童子の物語を描いているが、いずれも、その姿は、あきらかに仏教美術の影響を受けている。

室町時代から江戸時代にかけての能面の数々。般若、蛇、山姥、狐などなど。

能の謡曲の中では、そうした数々の妖怪たちが、様々なシチュエーションの中で、人間の情念の深さ、その悲しさを演じている。


妖怪絵の中で、とりわけ有名なものが、百鬼夜行絵巻。様々なバージョンの絵巻物が展示されていた。オリジナルは、室町時代に描かれたもの。その後、現代に至るまで、多くの画家たちが、自らのオリジナリティを交えながら、描き続けてきた。

江戸時代に描かれた、道成寺絵巻。蛇に化けた女性が、坊主が逃げ込んだ鐘に巻きついている。上記の2作品より、時代が下っていることもあり、コミカルに表現されていて、怖さは全く感じられない。

江戸時代に空前の妖怪ブームを巻き起こした、鳥山石燕の妖怪本。現代の本屋に並べても、決して遜色のない、その印刷物としての質の高さに驚く。

最後のコーナーは、水木しげるの描いた妖怪絵の数々。百鬼夜行図や、鳥山石燕のイメージをベースに、現代的な味付けを施している。

それにしても、さすが水木しげる。これまで見てきな、様々な妖怪絵と比べても、決して遜色がない。

古代から、中世、近世、そして現代までの、日本人にとっての妖怪像を概観できる展覧会だった。

どうやら、妖怪という存在は、人間という生き物がいる限りは、いつの時代でも、その形を変えて、生き続けてきたようだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿