2013年7月27日土曜日

日本の名蹟 和洋の書の変遷(五島美術館)

書家で古筆の研究者でもある、飯島春敬の春敬記念書道文庫の創立30年を記念した展覧会。

入口付近に、8世紀の正倉院文書の一部が展示されていた。収蔵品の記録のようなもので、果たして名蹟といえるが疑問だが、正倉院文書というだけで、貴重なものなのだろう。

聖徳太子筆と考えられてきた、一字宝塔法華経。実際は、12世紀に書かれた書で、聖徳太子が書いたものではない。やや細長の、繊細な筆使いで書かれており、その雰囲気が、聖徳太子を連想させたのだろう。

小野道風筆の絹地切。個性的な道風の書。一文字一文字が、波打つように書かれており、まるで呪文のように見える。

伝紀貫之筆の3つの高野切。伝藤原行成のこれまた3種の伊予切。いずれも、それぞれタイプの違ったかなの書。

この2組の作品に限らず、出展された作品のほとんどは、伝誰々。その本人が書いたとは、確実には言えないものばかり。

そうした書を愛する人々にとっては、それが真筆かどうかは、それほど重要ではなかった。その書が美しく、名人によって書かれた、と言い伝えられてきたのであれば、その通りに受け取られ、尊ばれてきた。

第2展示室に展示されていた、西行筆と伝えられてきた3つの書。どれも、決して整った綺麗な書ではない、ややぞんざいに書かれている印象だが、それこそまさに、人々が、放浪の詩人、西行に抱いていたイメージだった。

日本の書は、その書き振りや、その文字が表している言葉の意味だけではなく、それを書いた人物のイメージも、その中に表現されている。

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