2013年12月23日月曜日

かたちとシュミレーション 北代省三の写真と実験(川崎市岡本太郎美術館)

川崎市の生田緑地、鬱蒼と広がる森の奥にある、川崎市岡本太郎美術館。

そこで開催された、北代省三の企画展。

北代省三のことは、以前に見た、実験工房についての展覧会で知った。

北代は、1950年代には、絵画やモビール、舞台美術などの、いろいろなジャンルの作品に取り組んでいたが、1960年代以降は、写真を中心に活動するようになっていった。

初期の写真は、一見するとありふれた風景ばかりだが、構図にこだわり、幾何学的な造形を追求している。写真を始めたばかりの人が、はまりそうなパターンで、親近感を感じる。

そして、何よりも、そうした写真を、楽しみながら撮影している北代の顔が、思い浮かぶようだ。

やがて、雑誌の表紙などの写真が多くなり、いろいろなカメラを使った、実験的な作品を撮るようになった。

エンジニア出身であったという北代の、技術に対する興味が、そのまま作品に表れている。

北代の工房を撮影した写真が展示されていた。若い時と晩年の時のものだが、その風景はほとんど変わらない。それは、芸術家の工房というよりは、小さな町工場のように見える。

晩年には、子供の頃に憧れていたという飛行機に取り組むようになり、自ら模型を作って飛ばしたり、模型飛行機入門、という書物を書いたりした。

会場に、年老いて、模型の飛行機を手にし、満面の笑顔で、写真に収まる北代の姿があった。

子供がそのまま大人になった、という言葉があるが、北代は、その言葉が文字通り当てはまる人物だったようだ。

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