サントリー美術館で開催された飛天のイメージを巡る、壮大なテーマの展覧会。
2、3世紀のガンダーラ地方の石の彫刻には、空を飛ぶ人のイメージが彫られている。ヨーロッパの天使とも繫がるそのイメージは、東アジアで、独自の展開を遂げることになる。
天女は、楽器を演奏したり、歌を歌う楽人のイメージと重なった。日本の雅楽の名でも、羽をつけ美しい衣装を着た人物画踊るという形式が見られる。
唐時代の敦煌の壁画を剥ぎ取ったといわれる壁画の一部。背中の羽根の羽毛の一本一本までが、細かい筆さばきで描かれている。
有名な、法隆寺金堂の飛天の壁画は、あきらかに中国の影響を受けている。
奈良国立博物館の14世紀の当麻曼荼羅の複写の中では、羽根を持った楽人たちが、歌い、踊る。
阿弥陀信仰来迎図の中では、飛天のみならず、阿弥陀自身が空を飛んで信者の元を飛んでくる。福島美術館の重要文化財になっている阿弥陀来迎図では、そうした仏たちが金色で描かれている。
禅の影響が強いせいか、仏教というと、地味なイメージが強いが、昔は、仏教とは大陸からもたらされた先進的なものであり、華やかなイメージに包まれていたのかもしれない。
この展覧会の目玉は、宇治の平等院の本堂の壁に飾られている飛天の展示。当時の様子を再現した天女は、原色で色鮮やかに彩色されている。
現在のくすんだ色合いからは、渋さを感じるが、作られた当初は、色鮮やかで、華やかな仏の世界が、この世に現れたように感じられたのだろう。
そこは、死んだ後に訪れる浄土の世界。西洋でいえば天国。絢爛豪華な世界であるべきだろう。
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