2013年12月8日日曜日

古径と土牛(山種美術館)

小林古径の生誕130年を記念し、その弟弟子に当たる奥村土牛との関係をテーマにした、山種美術館での展覧会。

小林古径は、対象を線でしっかりと縁取りした上で、繊細な筆使いで、美しい絵画世界をつくりだす。

一方の奥村土牛は、あまり線は使わず、ぼんやりとした雰囲気の中で、少し幻想的な雰囲気を帯びた世界をつくり出す。

一見、対照的に見える表現方法を持った二人が、兄弟弟子だったというのは、興味深い。

土牛は、兄弟子の古径の真面目な性格を、心から尊敬していたようだ。

古径は、土牛に対して、絶えず絵のことを考えるようにすること、5分以上、絵のことを忘れることがないように、と語ったという。

5分以上、絵のことを忘れることのない人生とは、一体どんな人生なのだろう?

生真面目な性格の古径だが、不思議と、その絵には、独特のユーモアが感じられる。猿曳、という作品では、右の画軸猿の紐を持っている人物が、左には、嬉しそうに飛び回る猿がシンプルに描かれている。

西行法師、という作品では、西行が褒美としてもらった銀製の猫の置物を、子供に与える、という有名なエピソードを描いている。猫の置物を貰って、走り去る子供の描写には、思わず頬が緩んでしまう。

土牛の鳴門という作品は、文字通り、鳴門海峡の渦を描いているが、海の色の緑と、渦を描いている白の対比が美しい。

古径の死後、土牛は中尊寺の仏像を描いた。地元の少女をモデルにしたというが、どうも、私には、古径の面影が映されているように見えた。

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