埼玉近代美術館が、自らのコレクションを展示する企画展を行った。その出展数は、なんとおよそ1,000展にものぼる。
それらを、家族、眠り、顔、あるいは特定の作家など、およそ30のテーマに分類した。
まず、その企画のユニークさ、巧みさに感じ入ってしまった。
瑛九は、1911年に宮崎で生まれ、上京後は埼玉で暮らした。その故で、この美術館には多くの瑛九の作品が収蔵されている。絵画、版画、写真など、多くの分野で前衛的な作品を残している。
フォトグラム。カメラを使わず、感光紙の上に物をのせて、そのまま焼き付ける手法。1920年代に、マン=レイやモホリ=ナジらによって始められ、瑛九も1930年代から作成に取り組んでいる。
会場には、そのマン=レイやモホリ=ナジの作品も展示されていた。
瑛九は1960年に惜しくも亡くなってしまった。その死を嘆き、友人達の追悼文や出版した書物が展示されていて、読めるようになっていた。
その文章を読んでいると、瑛九が、そうした友人達に、いかに愛されていたのかがわかり、思わず目頭が熱くなってしまった。
百花繚乱というテーマのコーナーには、古今東西の画家達による花々の絵が、壁中に展示されていた。シャガール、熊谷守一、小村雪岱、小茂田青樹、須田剋太、山本容子、駒井哲郎など、その数およそ70点。ただただ美しく、壮観という言葉しかない。
寄贈された大熊家コレクションによる横山大観の作品。春雨 秋雨、朧夜、白梅、そして富士を描いた神州第一峰など。
近代のアート作品の展示が多い中で、これほど多くの大観の作品を目にすると、よけいに、日本画の美しさが、際立って感じられる。
構図の素晴らしさ、色合いの美しさ、ぼかしの技術の高さ。いずれも、ほぼ完璧といっていい作品。
他にも、駒井哲郎、ルフィーノ・タマヨ、熊谷守一、小村雪岱、タイガー立石、草間彌生、アントニ・タピエスらの、印象的な作品に出会った。
それにしても、失礼ながら、これほど多くの作品を、この美術館で一度に鑑賞できるとは、思いもよらなかった。
この埼玉という地は、こと美術ということにおいては、世界中のどの都市と比べても、勝ることはあっても、劣ることはないと言えるだろう。
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