この展覧会のサブタイトルは、熱熱!東南アジアの現代美術。シンガポール美術館のコレクションの作品が展示されていた。
マレーシア出身のイー・イランは、フィリピンのスールー族という海の民族をテーマにした映像作品。マレーシアとインドネシアの間の海で暮らしているその姿は、国境といったものの存在を、考えさせる。
タイのアラヤー・ラートチャムルーンスックの映像作品は、かなり衝撃的な内容だった。アラヤーが、安置所において、死者たちに、タイの古典物語『イナオ』の一節を滔々と読み聞かせている。
生きている人にとって、死者というものが、どんな意味を持っているのか。物語りを、読み聞かせるということが、どんなことを意味するのか。いろいろなことを、この作品は見る者に問いかける。
インドネシア出身のムハマッド・ユヌスの、約束された繁栄。ユヌスが思い描くユートピアをモノクロで描いた、縦2メートルほどの作品。
仏陀の生涯や、寺の縁起を描いた仏教画のように、一枚の絵の中に、いろいろなシーンが描かれている。アジアの人々の、絵画に対する共通の捉え方が伺える。
その他にも、総勢25名、8カ国の作家による、多彩な展示作品は、まさに、ジャングル、というこの展覧会のタイトルに相応しい。
東南アジアにおける、伝統や宗教と、グローバリゼーションの中で経済が急速に発展する社会が、そうした作家達の作品の中では、激しく、時に静かに衝突している。
それが、一つ一つの作品としても、展覧会全体としても、より魅力的なものにしている。とにかく、面白い作品ばかり。
しかし、日曜にも関わらず、人影はまばら。こうした展覧会に、人が集まっていないということは、日本のアート環境は、まだまだ貧しいのではないか。
フランシス・ベーコンや、村上隆、草間彌生など、メディアが派手に取り上げる一部の作家の作品展には、多くの人が集まる。
メディアに教えられたアートだけを楽しみ、自分から、面白いアートを探しにいかない状況は、作る者にも見る者にも、決していい環境とは言えないだろう。
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