2013年5月19日日曜日

河鍋暁斎の能・狂言画(三井美術館)

河鍋暁斎といえば、妖怪絵や、世相を風刺した個性的な絵が思い浮かぶ。

意外にも、河鍋暁斎は、自らも狂言を演じ、能や狂言に沢山の肉筆画、版画を描いていた。

絵だけを見せられたら、これをすぐに河鍋暁斎とはわからない。あまりにも、すでに作られてしまった暁斎のイメージとは違い過ぎるからだ。

能の翁、高砂、石橋、道成寺や、狂言の末広がり、蟹山伏など、邦楽ファンにはお馴染みの演目が、暁斎の巧みな技術で描かれている。

暁斎の、狩野派の流れを継ぐ絵師としての技術力の高さが、そうした作品から伺える。暁斎は、間違いなく、当時の日本における、最高の画家の一人だった。

いずれの絵においても、役者の動きの瞬間を、実に見事に捉えている。静止した絵でありながら、その前後の動きを感じられる、ダイナミックな表現に、思わず目を奪われる。

描かれている能や狂言を見たことがある人間であれば、自分の見た舞台が、思わず頭の中に蘇ってくるに違いない。

装束についても、細かい文様まで忠実に写し取っている。これは、実際にそれぞれの装束を丹念に取材した賜物だろう。完成された絵の他にも、多くの下絵が展示され、その取材の後が伺える、

また、狂言を演じる自分の姿を描いた珍しい下絵などもあり、河鍋暁斎の別な側面が垣間見え、実に楽しい展覧会だった。

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