2013年5月25日土曜日

大倉コレクションの精華1ー中世・近世の絵画(大蔵集古館)

大蔵集古館が、そのコレクションを公開する展覧会。第一弾は中世・近世の絵画作品を、前期と後期に分け、およそ40作品で構成された。

国宝の随身庭騎絵巻。鎌倉時代13世紀に描かれた作品。馬に乗り、随身を務める武士たちの姿を描いている。一人一人に名前が添えらていて、表情もきちんと描き分けられている。

その表情を見ていると、この人は気が小さそうだなとか、この人は大ざっぱだったのではないか、など、人物の性格まで推測できてしまう程、巧みに描き分けられている。

馬のたてがみも、細かい線で、丹念に一本一本描かれていて、その技術力の高さにも目を見張る。

うーん、さすが、国宝の看板に、偽りなし。

室町時代、15世紀に描かれた空也上人絵伝。口から仏が出ている、というイメージが定着している空也上人の生涯のいくつかの場面を描いたもの。

その描き方は、素朴で、絵師というよりは、普通の仏僧が描いたのではないか。また、現代のわざと下手に描くアニメのようにも見え、今日の日本のアニメ文化の源流を見ているようにも感じる。

幕末の江戸時代に活躍した冷泉為恭の山越阿弥陀図と神明仏陀降臨曼荼羅図。時代が近いだけに、その色の鮮やかにまず目がいくが、近寄って見ると、その細かい描写にも、目を奪われる。

冷泉為恭は、貴族の冷泉家とは関係のない絵師の家の出だったが、尊王派と佐幕派が緊張状態にあった京都で、尊王派から佐幕派のスパイだと目をつけられ、わずか42才で尊王派の手によって殺された。

その数奇な運命を知ると、この目の前の色鮮やかな絵が、また違った雰囲気に見えてくる。

江戸時代、18世紀に描かれた虫太平記絵巻。文字通り、太平記の登場人物の顔が、コオロギやバッタ、ムカデといった虫になっているという、ちょっとキモイ絵巻物。

鳥獣戯画絵巻と百鬼夜行絵巻のコンセプトをごちゃまぜにしたような作品。一瞬、ちょっと引いてしまったが、落ち着いてよく見て見ると、次第に楽しくなってくるから不思議だ。

安藤広重の肉筆による飛鳥山・隅田川・佃島図。浮世絵師のイメージが強い広重だが、こうした肉筆画を見えると、絵師としての広重の技術力の高さが改めてよくわかる。

山、川、海という3つの題材を受けて、それぞれの景色の特徴をよく捉えている。

谷文晁の夏景山水図。南画の技法を使って描かれた、一見すると、何のことはない普通の山水図のように見える。

しかし、近づきながら、遠ざかりながら見て見ると、高い山の上からの水が、下の湖に流れ込んでいて、その水を使って人々が暮らし、村落を形成している、という景色から、
なにかとても重要なこと、この世の中の真実、神秘など、いろいろなことが思い浮かんでくる。

いやはや。すっかり、谷文晁の魔術にやられてしまったようだ。

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