2013年8月10日土曜日

浮遊するデザインー倉俣史朗とともに(埼玉近代美術館)

倉俣史朗の名前は知っていたが、その作品は、あまり目にする機会はなかった。

埼玉近代美術館で開催されたこの展覧会で、生涯に渡る、主要な作品を、初めて目にすることができた。

若き日の倉俣は、柳宗理のデザインや、芸術家集団である具体、イタリアのデザイン雑誌などに、強い影響を受けたという。

子供の頃から、小物入れに思い入れがあった、という倉俣の設計した、透明なタンス、波をうっているように曲がっているタンスなど、奇妙な形のタンスが、何点か並んでいた。

やがて、倉俣は、シュルレアリスム、とりわけマルセル・デュシャンに大きな影響を受ける。それ以降、倉俣は、デザインにおける無意識の重要性を、強く意識することになる。

しかし、本人は、アートとデザインの境界をはっきり意識しており、椅子を作っても、アート作品は座れないが、自分の作品は座って使われるもの、と言っていたという。

倉俣は、横尾忠則や安藤忠雄などの、他の分野のクリエーターたちとも、積極的に交遊し、イッセイミヤケの、東京やパリのブティックのインテリアデザインもこなした。

家具やインテリアのデザインの他にも、個人用住宅の設計も行っていた。

イタリア、ミラノのデザイン集団、メンフィスに参加して以降は、洗練された作品が増えたように思える。

アクリルの透明な椅子に、造花が埋め込まれていたり、大胆にガラスを織り交ぜたデスクなどの作品を見ると、確かに、あきらかにそれまでの作品とは違っている。

倉俣の代表作とも言える、オバQという名のランプは、プラスチックを、布のように折り曲げて、文字通り、お化けのQ太郎のようにしたもの。倉俣の、デザイン感覚とアート感覚が、見事にマッチしている。

こうして、倉俣史朗の生涯と、その作品を振り返って見ると、彼が、戦後の日本を代表するデザイナーであったことがよくわかった。

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