2013年8月3日土曜日

色を見る、色を楽しむ(ブリヂストン美術館)

”色を見る、色を楽しむ”という、不思議な名前の展覧会が、東京駅にほど近い、ブリヂストン美術館で開催された。

展示の中心は、マチスの色鮮やかな切り絵で構成された『ジャズ』、それとは正反対の、ルドンの黒一色のリトグラフ『夢想』という2つの作品。

マチスの『ジャズ』は、20枚から構成されている。いずれも、マチスの弟子が彩色した鮮やかな原色の紙から、マチスが形を切り取って並べ、完成させたもの。

その対面には、マチスの油彩画が展示されており、その違いを楽しむことができた。

切り絵では、その色と、ハサミで切り取られた形がすべて。油彩画に見られる、微妙な筆先の変化や、輪郭線の曖昧さなどは、全く見られない。油絵はアナログ、切り絵はデジタル、といったところだろうか。

切り絵という形式においては、色彩の画家といわれるマチスの特徴が、実によく表れているように感じられた。

ルドンの『夢想』は、ルドンがパリに出る前、生まれ故郷のボルドーにいた頃に出会い、大きな影響を受けた、アルマン・クラヴォーの死に捧げた6枚のリトグラフ集。

クラヴォーは植物学者で、顕微鏡を使って、若きルドンに、沢山の植物のミクロの世界を見せたという。そのイメージは、ルドンの心に強く刻まれ、パリに出た後のルドンの描く不思議な生き物の原型になった。

最初の5枚のリトグラフは、いずれもルドンらしい、幻想に満ちあふれた作品だったが、最後の”日の光”というリトグラフは、窓の向こうに、花が咲いている、といういたって平凡な内容。

しかし、その平凡さが、とても強く印象に残っている。

この展覧会では、開催される直前の2013年4月9日に、92才で亡くなった、ザオ・ウーキーを追悼する意味で、1室にウーキーの作品が、9点展示されていた。

ウーキーの”07.06.85”という作品は、ブリヂストン美術館の常設コーナーに、いつも展示されており、馴染みの深い作品だった。こうして、別の作品と並べて展示されると、いつもと変わった印象を受ける。

これまでは、その青い色だけが、強く印象に残っていたが、この日は、青が、他の白、緑などの色と、微妙に入り交じっている、複雑な色合いの部分が、強く心に残った。

ウーキーの作品は、この”07.06.85”のように、作品を完成させた日の日付けが、そのまま作品名になっているものが多い。作品は、その時の心象風景である、ということなのかもしれない。

”15.01.61”という作品では、青、緑、茶、黄、そして線の黒など、実に多くの色が、微妙に混じりあい重なりあい、何とも言えない芸術空間を作り上げている。

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