2013年8月4日日曜日

文字の力・書のチカラⅡ(出光美術館)

東京国立博物館で開催されている、大規模な特別展”和様の書”、と連動するように、いくつかの美術館で、書に関する企画展が開催されている。

出光美術館で開催された、この展覧会もその一つ。小規模ながら、印象的な作品が見られた。

入り口の近くに、2つの作品が並んで展示されていた。伝紀貫之、高野切第一種。そして、伝小野道風、継色紙。いずれも、実に美しいかなの書。そのあまりの美しさを見ていると、本当はこの文字を誰が書いたのか、ということなど、どうでもいいことのように思えてくる。

平安時代の末期に書かれた、理趣経種子曼荼羅。大日如来などの仏を、一文字で表した種子で、曼荼羅として表現したもの。この書が書かれた時代は、文字には、大きな力があったのだろう。

豊臣秀吉の天下統一から、江戸幕府の成立にかけて、その難しい時代に帝位にあった、後陽成天皇は、書の名人としても知られる。展示されていた2点の書は、いずれも素晴しい。豊臣秀吉や、徳川家康といった歴史上の人物たちとの、決して楽ではない関係を生き抜いた、その人物の書は、そこに書かれている以上のものを、感じさせる。

一休の墨梅画賛。自ら、画と賛を書いている。賛の間に梅の枝を伸ばして、梅の花を、文字のように描いている。個性的な、というよりひねくれた、一休の性格が、よく現れている。

雪舟の書。南無布袋和尚と書かれた、六字一行書。よく見ると、太く書かれた部分が、鳥の形に似せて描かれている。雪舟が明を訪れた時に、向こうで流行っていた技法らしい。

良寛が、自らの漢詩を屏風に書いた、詩書屏風。流れるように書かれた漢字を、読み取ることは至難の技だ。良寛は、その書かれた意味を表すよりは、その心象を形として表したかったのだろう。

書は、その書いた人物のことを、よく表す。この展覧会では、改めて、そのことに気づかされた。

0 件のコメント:

コメントを投稿