2013年8月25日日曜日

テーマにみる近代日本画(泉屋博古館分館)

東京、六本木にある泉屋博古館分館で行われた、その収蔵品による、近代日本画の展覧会。

狩野芳崖の寿老人。七福神の一人、寿老人が、岩に腰掛けている。輪郭線の太さや濃淡で、画面の中のオブジェクトの存在感を描き分けている。その手法は、どことなく、曾我蕭白による仙人像を連想させる。

蕭白ほどには、エキセントリックな絵ではないが、あご髭の一本一本がピンと伸びている様子は、その描かれている人物の尋常でなさを、よく表している。

橋本雅邦の深山猛虎。二匹の虎が、滝のような渓流が流れ落ちている深い山奥に描かれている。二匹は、画面の右上を、警戒するように、睨みつけている。画面には描かれていないが、その方角には、龍がいることが、想像できる。

龍そのものを全く描かずに、その存在感を、虎の様子から感じさせるという、見事な手法。

狩野芳崖は、文政11年、1828年。橋本雅邦は、天保6年、1835年の生まれであることに気がついた。

二人とも、明治時代の画家というイメージが強いが、ほとんど江戸時代の人間と言ってもいい生まれ年だったのだ。

富岡鉄斎の3枚の水墨画。最後の文人画家といわれる富岡鉄斎。彼も、その生まれは、天保7年、1836年だった。

岸田劉生の四時競甘。桃、柿、瓜など、四季の果物を、掛軸の日本画に描いている。タッチは粗く、果物の輪郭と色は、微妙にずれている。濃厚な油絵の麗子像の岸田劉生とは、全く違った画家がそこにはいた。

望月玉渓の孔雀図。六双二曲の屏風に、二匹の孔雀が描かれている。その孔雀の羽の細かい描写に、身を奪われ、時間を忘れてしまう。対象を見つめる目と、それを表現する絵師としての技術。いずれが欠けても、この絵は生まれなかっただろう。

わずか40点ほどの出展ながら、日本画の真髄を味わうことができる、印象深い展覧会だった。

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