東京、木場の東京都現代美術館に、あのクレイジーな男が、またやってきた。
メキシコの広大な平原で、消えては現れる、トルネードに、ハンディカメラを持って、その中に突入していった、クレイジーな男。
フランシス・アリス。
今度は、どんなクレイジーなことを、しでかしたというのか?
2008年に、アフリカ側とヨーロッパ側をわかつ、ジブラルタル海峡に、双方からの子供たちの列で、架け橋を作る、という、これまたクレイジーな試みだ。
その様子を映像に収めた、”川に着く前に橋を渡るな”、という作品が、展示されていた。
勿論、ジブラルタル海峡を、徒歩で渡ることはできない。"子供達は、空想の世界の中で、出会うことができるだろうか?"と、映像の中のナレーションが語っていた。
水着姿のモロッコとスペインの子供達が、サンダルで作った、船の模型を手にして、砂浜から、並んで海に向かって進んで行く。
押し寄せる波が、子供達の前進を阻もうとするが、子供達は、その波を楽しむかのいうに、笑顔で、向こう岸に向かって、進んで行く。
カメラは、子供達といっしょに海の中に入って行く、決して綺麗ではない、緑がかった海の水が、画面一杯に広がる。時々、水草が、視界に映り込んでくる。
会場には、この作品の企画資料や、実際に使ったサンダルの船の模型も合わせて展示されていた。
アリスが描いたスケッチやアイデアのメモなどとともに、ジブラルタル海峡を超え、アフリカからの違法入国者に関する新聞記事の切り抜きも展示されていた。その多くは、悲しい結末を伝えている。
他に、子供の遊ぶ様子を映像に収めた、”砂の城”、”水切り”、という2つの作品。砂の城は、ベルギーで、水切りは、モロッコで撮影された。
この2つの作品は、撮影された土地に関わらず、日本を含めた、世界中のいろいろな場所で、行われている遊び。アリスは、そうした子供の遊びを映像化することで、いろいろなことを語っているように思える。
誰もが、心の中に持っている、幼い頃の遊びの経験。無駄なように見えて、実は、とても大切なそれらの行為。
逆に、重要と思われていること(仕事、政治、宗教?)が、こうした子供の遊びと、本質的に何処か違うのだろうか?などなど。
春に行われたメキシコ編に続き、今回もまた、そのクレイジーさをいかんなく発揮してくれた、フランシス・アリス。
クレイジーであるということだけが、現代の行き場のなくなった状況を、変えることのできる、唯一の方法なのかもしれない。
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