2013年9月22日日曜日

プーシキン美術館展 フランス絵画300年(横浜美術館)

横浜美術館で開催されたプーシキン美術館展。

2011年の秋に開催される予定だったが、東日本大震災の影響で延期され、2年後になってようやく開催された。

会場の入り口に、ニコラ・プッサンの、アモリびとを打ち破るヨシュア、という1メートル四方ほどの作品が展示されていた。

プッサンが1624年、30才の時に、パリの政治的な争いに疲れローマに移った時に描かれたといわれる作品。ラファエロらの作品を参考にしたといわれている。

以降、プッサンは二度と故国のフランスには戻らなかった。フランスのロココ美術を代表する画家だけに、その経緯は意外に感じられる。

この絵画も、エカテリーナ女帝によって購入され、ロシアに渡った。この展覧会を象徴するように作品を最初に持ってくるあたりに、企画の意図が感じられる。

フランソワ・プーシェの、ユピテルとカリプソ。女神ユピテルがカリストを誘惑している場面。その二人の肌の色は、薄くピンクがかった白で、何とも言えず美しい。これぞ、フランスのロココ絵画、といった感じ。現実感が感じられず、王侯貴族のための、美のための美の典型だ。

アングルの、聖杯の前の聖母。アングルらしい、濃厚なこってりしたフランス料理のような絵画。聖母が聖杯の前で手を合わせ、伏し目がちに聖杯を見つめている。聖杯の上には、メダルがまっすぐに立っている。現実的にはあり得ない様子は、ある種の奇跡を描いているのだろう。

ドラクロアの、難破して。濃い緑色で描かれた荒海を進む、一艘の小舟。難破した人々が、ある人は他人を助け、ある人は、負傷して縁に寄りかかっている。小品ながら、ドラクロアを象徴するような作品。

ヴィヤールの、庭。庭の中央にあるイスに、二人の女性が座って話をしている、というだけの作品。ヴィヤールは、形よりも、この絵を色の集まりとして描いている。しかも、色は、灰色や、くすんだ色合いの青や緑を使っている。

それなのに、この絵は、実に美しい。絵といより、色のコンビネーションを表現した、文様のようにも見える。ヴィヤールは、まさに色の魔術師だ。

モーリス・ドニの、緑の浜辺、ペロス=ギレック。縦1メートル、横2メートルの色鮮やかなキャンバスに、思わず声を上げそうになった。

人の肌をピンク色で描く、ドニの独特の色彩感覚。しかし、印象的なのは、遠くに見える空と海の青だった。全面の人々の姿は、伝統的な人間のポーズ、あるいはゴーギャンの絵の中のあるポーズのように見える。

マチスの、カラー、アイリス、ミモザ。マチス独特の平面的で、塗り絵のような花の絵。モロッコを訪れた後に、ロシア人のコレクター、シチューキンの部屋を飾るために描かれた。

ロシアの美術館の展覧会で、フランスの300年に渡る絵画の流れを見ることができるというのは、考えてみれば、不思議なことだ。

ロシア料理が、フランス料理を影響を与えたり、フランスで発展しながら忘れられたバレエが、ロシアで復活されたり、といったこの2つの国の関係は、ヨーロッパのある一つの側面を感じさせる。

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