2013年9月1日日曜日

レオナール・フジタ展(Bunkamuraザ・ミュージアム)

渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで行われた、藤田嗣治、レオナール・フジタの展覧会。ポーラ美術館の収蔵品が中心。

藤田の作品にはネコがよく登場する。藤田が好きで飼っていたのだが、その描き方をよく見ると、シッポなどの毛の一本一本を丹念に描いている。

ネコという画材は、藤田の絵画の特徴である線の表現が、実に効果的に利用されている。藤田がネコをよく描いたのは、決して、好きで飼っていたから、だけではないだろう。

藤田の白といわれた、その独特の白は、シッカロールから作られた、タルクというものをキャンバスに塗り付けて、実現された。

藤田のキャンパスに描かれた線は、普通のキャンバスに描かれた線と、明らかに違っている。日本人の器用さから生み出された、藤田の独特の線描写は、その特別なキャンバスの上で、誰にもマネすることのできない、藤田だけの世界を生み出していった。

白いベッドに、ヌードの金髪の女性が、上を向いて横たわる、仰臥裸婦。左隅にネコがちょこんと描かれている。アングルやマネの同じ題材の作品を踏まえた上で、念密な構成の元に描かれている。

ポーラ美術館のコレクションは、子供を描いた作品が多いこと。

藤田の描く子供は、決してかわいらしいだけの子供ではない。どこか、いじわるな感じがする、独特な表情。特に少女は、目の目の間が広く、目は丸々しているが、目尻がつり上がっており、ネコ目のようにも見える。

浮世絵に描かれる子供も、決して可愛くはない。藤田は、もしかしたら、そのイメージを持っていたのかもしれない。

誕生日という作品。12人の子供が、大きな丸いテーブルに座っている。中央にはバースデーケーキが置かれているが、テーブルが余りに大きく、誰もケーキに手が届きそうにない。

12人の食事風景というと、勿論、これは最後の晩餐のパロディになっている。藤田の独特なユーモア感覚が、よく現れた作品だ。

いろいろな職業を、小さなタイルの上に、1つづつ描いた、プティ・メティエ(小さな職人たち)、というシリース画。

子供を使って、床屋、靴屋、肉屋などを、描いているが、それぞれの職業を表す背景と小道具が、実に見事。職業を表すフランス語が書かれているが、その絵を一見するだけで、文字をみるだけで、その職業がわかる。

藤田の画家としてのセンス、技術の高さが、遺憾なく発揮されている。こちらも、日本にある職人絵をヒントにして描いたのかもしれない。

西洋画の伝統がない日本から、芸術の都であるパリを訪れ、そこで成功した藤田。藤田の絵画には、ヨーロッパの絵画の画材やテーマの背景に、日本の伝統的な手法やイメージが隠されている。

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