2013年9月1日日曜日

速水御舟 日本美術院の精鋭たち(山種美術館)

速水御舟を中心に、横山大観、下村観山、菱田春草、今村紫紅、小茂田青樹、安田靫彦、小倉遊亀など、山種美術館のコレクションによる、日本美術院の画家たちの展覧会。

今村紫紅は、横山大観による朦朧体が主流を占めた、当時の日本画において、中国の影響を受けた、南画の鮮やかな色と線を持ち込んだ。

今村紫紅の早春という作品は、早春の農村の風景が、しっかりと縁取りされ、鮮やかな色合いで描かれている。

大観は、はじめは拒否反応を示したが、今村紫紅の弟格に当たる速水御舟や小茂田青樹は、その影響を受け、自分の絵画に取り込んで行った。

速水御舟の翠苔緑芝という、金箔の屏風の上に、鮮やかな緑を中心とした色合いの作品。右の屏風には黒い猫が、左の屏風には、白いウサギが、対象的に描かれている。

あけぼの・春の宵という2つの小品がセットになった作品で、速水御舟は、その驚きべき筆さばきを見せる。

あけぼのでは、ピンク色ともオレンジ色ともつかない曙の空に、木の枝が黒いシルエットとなって浮かんでいる。その木の枝の細かさは、神業と言う他ない。

春の宵という作品でも、宵というよりすでに日が落ちて暗くなった景色の中で、桜の花が静かに散っている。その小さな花びらの一枚一枚を、速水御舟は丹念に描いている。

白芙蓉という作品では、大きな芙蓉の花の後に、花の幹が右下から左上に、微妙な曲がりで描かれている。安田靫彦は、その幹の描き方を見て、速水御舟の線の描き方の尋常のなさを実感したという。

小倉遊亀の2対の2双の屏風絵。右には黒い着物の舞子、左には紫の衣装の芸者が描かれている。右の舞子は、ちょうど動きを止めた静の舞。左の芸者は、まさにこれから舞おうと、右腕を大きく上げた、動の舞。

山種美術館の代表的な収蔵作品、速水御舟の炎舞。闇の中で、炎が勢いよく舞い上がり、その周りを、蛾が舞っている。

その闇に炎の火の粉が舞い、独特の色合いを醸し出している。速水御舟自身、この色は、2度と描くことはできない、と語ったという。

2014年に、院展が再興100年を迎えることを記念したこの展覧会は、その歩みの偉大さを、華麗に描き出していた。

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