2013年6月2日日曜日

カリフォルニア・デザイン1930-1965(国立新美術館)

アメリカの西海岸は、20世紀なってから急速な発展を遂げた。

会場の入り口に、1922年と1930年に撮影された、ロサンゼルスの航空写真が展示されていた。1922年には、ただただ区画を区切る道路しか写っていないが、1930年には、町中を住宅が覆ってしまっている。

その何もなかった場所には、東海岸から多くのデザイナーが移り住んだ。彼らの多くは、ヨーロッパで建築やデザインを学んだが、西海岸の、過去のしがらみがなく、開放的な雰囲気や、広大な自然に触れ、それまでのヨーロッパのものとは一味違った、新しいデザインを生み出していった。

第二次世界大戦が始まってからは、ユダヤ系を中心に、ヨーロッパから避難してきた多くの芸術家や建築家なども、この地に住むようになり、カリフォルニアのデザインは、さらに進化を遂げるようになった。

セドリック・ギボンズがデザインしたアカデミー賞のオスカー賞。世界で最も知られたデザインの一つだろう。

アメリカ西海岸は、ハリウッドを中心とした映画産業の中心地だった。映画のセット、衣装、タイトル、ポスターなど、そこから様々なデザインが生まれ、世に広まっていった。

展示会場の所々には、デザイナー本人が、展示されている作品について語っているビデオが上映されていた。多くのデザイナーがまだ現役で活躍しているということが、カリフォルニアデザインが、まさに現代のデザインであることを証明している。

カリフォルニアデザインを象徴するイームズ。ビデオが上映されている場所には、イームズのチェが並べられていて、実際にその座り心地を体験することもできる。

壁が一面ガラス張りになっている開放的な住宅。こうした住宅は、ヨーロッパやアジアでは生まれなかった。多くの開放的な土地があり、しかも、そうしたガラスを生み出せる工業力があるアメリカ、しかも西海岸でこそ相応しい。

オーストリアから移住した建築家のシドラーが、ヨーロッパのモダンな建築をもとに、西海岸の環境にあった建築を生み出し、リチャード・ノイトラらがそれをさらに発展させていった。この二人は、フランク・ロイド・ライトのもとで働いていたことがあった。

カリフォルニアには、多くの日系人が住んでいた。ルース・アサワは、そうした日系人の一人。強制拉致などの不幸な経験を経ながらも、独自のデザインを生み出した。そのインテリアのような”彫刻”とよばれる作品は、レースをたらし、ところどころが膨らんでいて、不思議なリズム感を見るものに感じさせる。

アールヌーボーやバウハウスといった、ヨーロッパのデザインとは一味違ったカリフォルニアのデザインは、現在デザインへの影響という点では、明らかにヨーロッパのものよりも、私たちの生活に大きな影響を与えている。

0 件のコメント:

コメントを投稿