2013年6月9日日曜日

クラーク・コレクション展(三菱一号館美術館)

展示の内容は、ルノワールが中心を占めていたが、他にも、コロー、ミレー、ピサロ、モネ、ドガなど、印象派を中心に、18世紀後半のフランス絵画が70点ほど。

ピサロの”ルーアンの港、材木の積み下し”と”ボン・ヌフから見たルーブル”。ピサロにしては、横90cmという大作。

ピサロというと、地上の目線から描く絵が多いイメージがあったが、この2点は、高い場所から、風景を俯瞰している。空気のゆらぎを感じさせるように、工夫をこらして描かれている。

ジャン=レオン・ジェロームの”蛇使い”と”奴隷市場”。いわゆるサロンの画家。世界中を旅した経験を元に、イスラム世界のエキゾチックさを、ヨーロッパの正統的な油絵の手法で描いている。

”蛇使い”では、美しいイズミックタイルが貼りつめられた部屋で、少年がヘビを扱っている。イズミックタイルはトルコ、蛇使いは、エジプトで見たものを組み合わせた、明らかなフィクション。しかし、描かれている絵は、美しい。

そして、ルノワールは、人物画、風景画、静物画と多様なジャンルにわたる、20点ほどが展示されていた。

”劇場の桟敷席(音楽会にて)”は、いかにもルノワールらしい人物画。音楽という聴覚、画面に描かれた花束が嗅覚を、そして、黒服に身を包んだ美しい女性が視覚を、それぞれ意識させる。

”タマネギ”という静物画では、あまり描かれることのない題材を取り上げている。タマネギの皮の、金色に似た色合いが、赤系の色を上手く使って描かれている。こんな色のタマネギが本当に存在したら、飛ぶように売れていくに違いない。

ロバート・スターリング・クラークという人物は、19世紀末にニューヨークの裕福な家庭に生まれ、弁護士を務めていたが、莫大な遺産を得てから、パリに居を移し、そこで多くの美術品を購入した。

第1次大戦後にニューヨークに戻り、世界恐慌の際には、暴落した美術市場で多くの名品を買い漁ったという。

美術品を後世に伝えるという点において、コレクターの存在は大きな意味を持っている。遺産を得て、多くの美術品を買い漁る、というのは、コレクターの1つのパターンであり、そうした存在のお陰で、今日、美術品を楽むことができるのも、1つの事実だ。

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