2013年6月1日土曜日

唐時代の書、徹底解剖!!(書道博物館)

前々から、鴬台駅にほど近い、書道博物館には行ってみたいと、かねがね思っており、ようやく、その機会が訪れた。

企画展のテーマは、唐時代の書。少し前に行われた、王羲之関連の企画展に続いたものだ。

入り口を入ったすぐの所に、唐の四大家といわれる、欧陽詢、虞世南、褚遂良、顔真卿の拓本が並んでいた。

2階に上がると、期間によって展示品を変えているコーナーがあった。私が訪ねた時は、いずれも敦煌から出土した唐時代の仏教典が展示されていた。

細かい字で、一字一字丁寧に仏の言葉が書かれている。四角くきっちりと書かれているもの、線をやや長めに書いているもの。

それらの経典を書いた人間の名前は伝わっていないが、その文字を通じて、書いた人間の個性が伝わってくる。

同じく2階の特別展示室には、唐の大宗、高宗、玄宗という3人の皇帝の書が展示されていた。

唐の大宗は、名筆として名高い王羲之の蘭亭序の現本を、自らの墓に埋葬させたほど、書に関心が高かった。そのため、代々の皇帝も、よく書を書いた。

数ある展示品の中でも、とりわけ印象に残ったのは、顔真卿の自書告身帖。唐時代の高位の役人でもあった顔真卿が、皇太子の教育係への移動命令を、自ら綴ったもの。

これを書いたとき、顔真卿は72才だった。その4年後、政局に巻き込まれ、説得に向かった逆臣に囚われ、命を奪われることになる。その逆臣は、顔真卿という人物に一目を置き、寝返りを迫ったが、顔真卿は拒否した。

目の前に展示された、この自ら書いた辞令書を、単なる名書、としてだけ見ることはできない。そこには、どうしても、最後まで自分の意志を貫き通した一人の人間の生き様が見えてきてしまう。

この根岸という街中の、ラブホテルが立ち並ぶその一角に、ひっそりと佇む小さな博物館の中には、実に多くの物語が刻まれた、数々の書の名品が納められている。

0 件のコメント:

コメントを投稿